花冠

隠し事はたくさんある

たくさん、たくさん、ありすぎて、本当がわからないほどに



花冠****//秘密



「アークさん。」

呼べば、振り返ってくれる、柔らかく微笑んでくれる、優しい翡翠

「カノンさん。」

呼べば、猫のように目を細めて、微笑を浮かべる、綺麗な淡いグレー

やさしい、色。優しい檻。


そう、ソレは、「檻」


とても、とても、優しい、何かで出来た、頑丈で、安全で、けれども、とてももろい「檻」


檻の中の、自分は彼らのためにある。


乞われれば望まれるままに、彼らが綺麗だと褒めてくれる旋律を奏でる。


ダイキライな「自分」価値のない「自分」

そのなかで、唯一、彼らが好きだと、彼らが綺麗だといってくれるから、自分の「歌」はスキで、価値がある素晴らしいものだった。




「    」




彼らが呼ぶ、自分の名前が「本当」じゃなくても

この、今の姿が、今の年齢が、「本当」じゃなくても



嘘で塗り固めて、なかみは空っぽ

虚無のソレ

けれど、彼らが好きで、愛おしくて、幸せで

それは「本当」

たぶん、きっと、唯一の「自分」の「本当」

ずっと、ずっと、優しくい「檻」の中にいたかった

檻の外になんて出たくなかった

檻の中にだけしか「本当」がなくて

檻の外側は、世界は「自分」にとって、「嘘」でしかなく

否、「嘘」というよりは、「本当でない」と言うべきなのか

とにかく、「檻」の外側は、「自分」にとって、「あるべき世界」ではなかったのだから


あまりに、空虚




「カノンさん、アークさん。」




すき、すき、陳腐な言葉だけど、ほんとうに、「愛してる」


それだけが、「本当」


ウソツキで、ごめん。

うそをついてることを、隠していてごめん。

でも、「本当」にすき、だいすき

愛してる


chapter02/monologue