白と黒
モノクロ夢を見た
真っ白な世界
空も陸も海も何もない
ただ真っ白な空間で
咲き乱れる白い薔薇と漆黒の薔薇
突き刺さる黒白(コクビャク)の槍
刺さる槍は
花冠
-07-
「・・・・・・・・・。へんなゆめ」
そこでスゥと瞼があいた。
白と黒、光と闇で編まれたような槍が突き立つ場所を眼で追おうとしたところで眼が覚めた。
は夢の内容を特に気にする事もなく体を起こす。
サラと、肩ほどまでの黒髪が動きに合わせて流れた。
「・・・っ」
ズキと頭に鈍痛が走る。
昨日、泣きすぎたせいだろうと頭をふった。
一度睡眠をとり、思考を放棄したせいか、混乱は随分と引いていた。
夢かもしれない
と一瞬おもったけれども、手にあるホグワーツの印の入った羊皮紙が現実を告げる。
のろのろとベットから起き上がり、開けっ放しだったクロゼットの鏡をもう一度覗き込んだ。
「ひどいカオ・・」
は鏡の中の自分に自嘲する。
泣きはらした眼は腫れて、顔色も白すぎる。
闇を孕んだような黒い眼が虚ろに自分を見ていた。
「眼の色・・・」
戻ったんだ・・
と、何の感慨もなくただ事実を受け入れる。
あの眼の色だけは白昼夢だったのかもしれないと自分を逃げ道にいなすとはぁ・・と大きくため息をついた。
考えなければならないことはあまりにも多い。
元の世界に帰る事
自分の記憶の流出を止めること。取り戻す事
そして、「ハリー=ポッター」の物語を、未来を知っている自分がどうするべきなのかと言うこと。
「基本は・・無干渉だろうね・・・」
ポツと、鏡の自分にそう吐いて、それからクロゼットを閉じた。
「とりあえず、アークとボスにココを出て行くって言わないと・・・」
フラフラする頭で今自分がしなければいけない事を口に出して言葉にする。
「ハリー=ポッター」というキーワードから、は鮮明な記憶は不透明ながらも、おぼろげに自分が何者で、どういう経緯でココに・・この「世界」にいるのか
と言うことは、忘れなくなったようだった。
「・・・ああ・・まったく・・・」
オレが一体何をしたって言うんだろう
だれともなくグチを小さく吐いて、は与えられた部屋から一歩踏み出した。
「世界」 に 踏み込んだ
黒白の槍は突き刺さる
ソレを殺すために、ソレを封ずるために
夢は、に強い印象を与えることなく、衝撃を与えることなく
数時間後にはのナカから薄れて消えていった
0 1 * 薄 闇 の 淵 堕 落
今回は短めで。次回からやっと舞台がイギリスに移ります