花冠
 -05-


「ボスの屋敷に来てほしい。」


「はぁ?」


事後にいわれた言葉は、はっきり言って理解しがたいものでは思い切り眉間にしわを寄せた。




「やだよ。オレ出張はしないの。」


いわれた言葉を正しく理解して、はそう返す。

出来ればここから。この全ての始まりだった教会から離れたくなかった。

先の言葉を紡いだのはの常連客の一人でマフィアの幹部の人間らしい。


「だいたい、なんでボスなわけ?アークさん」

とりあえず、そう返すと、客の男・・アーク=エルフォルドは「ボスがオマエの歌を是非聴きたいといっている。」

と、返すだけだった。

その言葉にはため息を付く。

「ふぅん・・アークさん。そのためにオレに近づいたんだ?ボスの命令で。」

アークはの上客の一人でのお気に入りだった。

2週に一回程度のペースで現れては、の身体も、歌も要求し、キッチリ言い値の130万をキャッシュで払っていく。

それに、他の客と違いの身体を気遣ったし、なによりマフィアだというのにその眼がやさしく、柔らかくみえた。

それが妙にくすぐったくもあり、嬉しくもあって、はココに来てハジメテ甘えれた人間であるアークをとても気に入っていた。


携帯の日付は10/2。

どうやらこの日付は本当らしく、ちがうのは時間だけだという事を最近知った。

アークは黙り込んだまま何も答えない。

ははぁ・・とため息をつくと、言葉を紡いだ。



「銃の扱いを教えてくれるなら、いいよ」


「・・・!」



言葉にアークはを見る。

キレイに笑みを浮かべたの漆黒の瞳と眼があった。


「ほら、オレ結構な値段を相手に要求するじゃん?いい加減レイプとかされてもおかしくないんじゃないかなー・・なんて。」

逆恨みって言うか、やりたさあまってっていうか

「そうなったらさ、オレまだ子供だし力じゃおじさんたちに絶対敵わないからさぁ・・銃おしえてくれるとうれしいんだけど?」

ああ、もちろんその条件が飲めないならオレはテコでもココをうごかないし、アークさんとはもう寝ない。

とも付け足して、はじっとアークの緑色の眼を見あげた。


アークは少し考えた様子だったが「わかった」と了承する。

「交渉成立だね。」

はにこりと無邪気に笑みを浮かべた。

その日は朝までアークとすごして、オーディオプレイヤーと携帯充電器一式、通帳(いい加減主事金が膨れてきたので口座を作った)だけをもって

アークにつれられて彼のボスの屋敷へと招待された。




アークのボスはが想像してたよりもずっと若く見えた。

(マフィアのボスって言うから・・もっと厳ついのをそうぞうしてたんだけどなぁ・・)

苦笑して、目の前の整った顔立ちをした男を見上げる。

「はじめまして、ボス。」

にこりと笑みを浮かべてはそれだけ、スゥと息を吸い込んでいつものように唄を歌った。


歌いながら、はどうしてこんな事をしているのか、考えないように。

葛藤をココロに押し込めながら、奥深くで叫び声を上げていた。






、ありがとう。ボスも大変満足されたようだった。」

微笑してそういわれて、もつられて笑ってしまった。

「いいよ。ギャラも沢山もらえたし。今日は泊めてくれるみたいだから言葉に甘えさせてもらうよ。」

「そうか・・。それでな・・・・実は・・」

「?」

言いよどむアークには首をかしげると、アークが観念したように言った。

「ボスが・・君に雇用契約を結んでほしいそうだ・・・」

「雇用契約ぅ?」

言われた予想外の言葉には思わずオウム返しした。

「ああ・・要するに、ボス専属の歌い手になってほしいと・・・」

困ったように言うアークにはしばらく黙っていたが、不意にふっと笑むと言葉を紡いだ。

「いいよ。」

「・・・・・本当に?」

どうやら断られるともっていたらしく、アークは軽く眼を見開いてを凝視した。

そんな様子には笑って、もう一度「いいよ」と肯定の言葉を紡いだ。


「オレ、アークさんのこと結構好きだし、これから寒くなるだろうし・・・あの教会じゃ暖はとれなさそうだしね。」

「そうか・・ギャラはもちろん用意する。いくら必要だ?」

「んー・・・・」


言葉には少し考えてそれから言った。


「月70万でボスが望むときに望む場所で何度でも歌ってあげるよ。」

「たった70でいいのか・・・?」

「うん。言ったでしょ?アークさんのこと結構好きだし、銃教えてもらうしね・・サービス。」


クスクスわらってはそういうと、ああでも・・と付け足した。


「ボスに抱かれるのはNG。アークさんが抱きたいなら別料金30万は払ってね。・・キャッシュで!」


にっこり笑って言われた言葉にアークは苦笑した。


「一度、教会にもどるか?」

アークの言葉には首を振る。

「いや、必要なのは一応持ってきてるし・・いいよ。べつに・・これからよろしくね。アークさん」


にっこりと笑うには迷いも歪みもなかった。






教会に何の未練もなく、すんなりとはアークのボスの屋敷に住まう事になった。

あれほど頑ななまでにどうして教会に存在しようとしていたのか、は自分の不可解な行動に苦笑した。






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ポタ夢のはずなのに、ポタ要素が全くでてこないですね!ああん・・!