花冠/7227打
花冠****/凍花
飾られたヒイラギ
彩られたもみの木のクリスマスツリー
魔法によって室内に降る幻の粉雪
大広間は今夜の聖夜祭に備えて準備は万端のようだった。
しかし、大仰に飾られた大広間ではあるけれど、生徒の数はごく僅か。(といっても結構な数だが)
ホグワーツはクリスマス休暇で、生徒の大半は実家へと帰宅している。
ざわめきはいつもより、すくなく冬のキィンとしたつめたい空気がホグワーツを満たす。
わずかに残った生徒達に梟たちがせわしなく飛び交い、色とりどりのクリスマスカードを落としていく。
ハリーは落とされていくそれらを見ながら、自分の手元に落ちてきたクリスマスカードを柔らかい笑みを浮かべながら眺めた。
決して数は多くはなかったが、それでもこのホグワーツに入学するまでは一枚ももらった事がなかったソレは、大切な大切なモノだ。
ロンや、ハーマイオニーはもちろん、ウィーズリー家のひとびとや、ダンブルドア、ネビルやシェーマス・・
この学校でであったすばらしい友人や、その家族、恩師からのカード。
そして、何より嬉しかったのは、出来たばかりの血が繋がらない仮初の、しかし、大事な“家族”。
名付け親からのメッセージカード
ハリーはカードを大切に手にして、それらを運んできた梟たちに礼をいった。
バサリと白い影。
大広間にまう、純白の梟。
ハリーはソノ影に視線をやった。
純白はハリーの梟、ヘドウィグの特徴だ。
白い影は迷わずハリーの元へ飛んでくるはずだった。
しかし、その予想は外れ、白い影は大広間の入り口近くのしかし、あまり目立たない。
いつしか“彼”の定位置になった場所へと降りる。
良く見れば、その梟はヘドウィグではなく、“彼”の梟の、だった。
あまりハデ過ぎない花束を“彼”、の元に落とす。
それに、ハリーは驚いた。
彼に贈り物をする人物が思いつかなかったからだ。
(もちろん、ネビルはきっと彼にカードを送っただろうが、花は贈らないだろう。)
あまりにも、ハリーの中でイレギュラーである出来事にハリーは眉を寄せる。
と、はが落とした花束を大切そうに抱える。
がホゥと鳴き、の肩に止まった。
は肩に乗ったの嘴をなでて、大広間を何事もなかったかのように出て行った。
が大広間の扉をくぐった途端、ざわざわと周りがささやきあう。
「今年もきたな、あの花束」
「いったい、誰が送ってるんだろうなぁ・・」
ささやきあう声で、ハリーはあの花束が毎年“彼”に送られている事を知る。
(全然、気付かなかった・・・)
ハリーは心中でそう吐く。
と、なんとなくその花束の贈り主が気になって、ハリーも席を立った。
を追いかけるために。
しのびの地図を開くと、の居場所はすぐに記された。
記されたの後を追うようにハリーは足を進める。
は真っ直ぐに湖のほうに向かっているようだった。
外は耳鳴りがしそうなほどの寒さで、息は真っ白に染まる。
それでもは気にせずに湖にそって歩き続ける。
昨夜降った雪が積もって、歩くたびに踏んだ雪がギシギシと音を立てた。
(そのため、ハリーは気付かれないように随分と距離をとってを追いかけた。)
ホグワーツから随分離れたところではやっと歩くのをやめた。
ハリーはこの寒さだというのに背中にうっすらと汗をかいてしまったほどだった。
(なにをするんだろう・・・)
ハリーは離れた木の影からの様子を伺う。
は抱えていた花束から1本だけ花を抜き取ると、後の花束を湖に沈めた。
思わぬ行動にハリーは目を見張る。
捨てた とも思える行動だったが、そうとは思えないほど、の花束に対するソレは丁寧で、そして愛おしさに満ちていた。
すぅと、が深く息を吸った。
When you wish upon a star
Make no difference who you are
Anything your heart desires
Will come to you
If your heart is in your dream
No request is too extreme
When you wish upon a star
As dreamers do
Fate is kind
She brings to those who love
The sweet fulfillment of
Their secret longing
ハリーでも知っている、美しい旋律だった。
キィンとした冬の空気に触れれば壊れるような繊細さと、美しさをもってして奏でられるの詩
どこか、遠く、遠くを見ながら奏でられるその旋律にハリーは聞き入った。
Like a bolt out of the blue
Fate steps in and sees you through
When you wish upon a star
Your dream comes true・・・・
最後のフレーズを歌い終え、は肩に乗せたを腕に移し、その目の際と、嘴に優しくキスを落とす。
「 」
が何かを純白の梟に伝え、腕から放す。
バサリと、飛び立つ純白の影を見送りながら、ハリーは一瞬前に起こった光景に意識を奪われていた。
純白の梟にキスを落とした後、言葉と共にこぼされたの表情に。
ふんわりと、冬の雪解けのあとに見せる花々のようなやさしく穏やかな笑み。
はじめてみる、の表情だった。
決して、ネビルや、自分、他の人間には絶対見せないであろうその表情。
ハリーにとって衝撃であったその出来事に思考回路が停止する。
そのため、近づいてくる足跡に気付かなかった。
「・・・・なにをしている。ハリー=ポッター・・・・・」
凛とした透き通った声を向けられてハリーははっとした。
目の前にキレイなしかし無表情な人形のような表情をしたがたっていた。
手には、先ほど花束から引き抜いた花が大切そうに握られている。
「あ、いや・・えっと・・・」
覗いていました。とは言いづらくハリーは視線をウロウロと彷徨わせる。
はしばらくハリーをじっと見つめ。そして言葉を紡いだ。
「言いたくなければ、別に構わない。」
言って、そのままハリーの横を通り過ぎようとした。
「あ。!」
自分の横をスルリとすりぬけるの腕をハリーは思わず掴んだ。
(って、なにしてるんだ?!ボク・・!)
自分がしでかしてしまった行動に、ハリーは驚く。
が、引きとめられたも随分驚いたようで滅多に変わらないその表情が驚愕の形に変わっていた。
漆黒の眼が大きく見開かれて疑問を浮かべる。
“ナゼ?”と
「あ、あの、その・・花・・どうしたの?」
手にされたの花を指差しながらハリーは半ば引きつったような笑みで言葉を紡ぐ。
と、はとっくに表情をいつもの無表情に戻してハリーの手を腕からやんわりと外して「ああ、コレか。」と答えた。
「・・・毎年、誕生日に、以前世話になったから送られてくる。」
言葉に、ハリーは緑色の目を見開いた。
「え、、今日が誕生日・・なの?」
「ああ、12月25日はオレの誕生日だ。」
言って、ハリーなど全く気にせずは、もう話は終わったとばかりにハリーに背を向けて、ホグワーツへと足を向ける。
遠ざかったいく背中をしばらくハリーは呆然と見た後、ハっとして声を上げた。
「・・!!!」
「・・・・・」
離れた先からがチラリと視線だけをよこす。
ソレを見て、ハリーは大きな声で言った。
「その・・誕生日・・!オメデトウ・・!!!!!」
言葉に、は驚いたような表情をして、それから振り返る。
「ありがとう」
言って、やんわりと笑みをハリーに向け、またくるりときびすを返し、今度こそホグワーツへと・・・
向けられた笑みに、今度こそハリーの思考回路は完全に停止する。
かぁと、頬があつくなった。
バクバクと心拍数が上昇する。
「う・・・うわぁ・・・・・・・」
口から出たのは意味をなさない声。
自分以外に向けられた笑みでも、見ほれるほどに美しかったその笑みが、自分に向けられた瞬間の感想は。
壮絶
としか、言いようがなく。
「男なのに・・・キレイすぎるのって・・考え物だと思うなぁ・・・・」
冬の外気に晒されて冷たくなった掌を頬に当てると、掌にじんわりと熱が伝わってきた。
いつか、赤毛の親友がを冷たくて、キレイな人形みたいだと、乱暴に言っていた。
彼はなにを言っても動じないし、無表情で・・・ボクも本当にそうだと思った。
けれど、その言葉を聴いていたネビルだけは苦笑しながら「そんなことないよ」と「はやさしいよ」と言っていたのを思い出す。
その意味が、今日やっとわかった気がした。
きっと、ネビルはの笑みを知っていたのだろう。
おもうと、ふいにチクとなにか刺されたような痛みが胸の辺りに走った。
「・・?」
走った痛みは一瞬でハリーは気のせいかと首をかしげて、自分もホグワーツへと足を向けた。
fin
と、言うわけで7227打リクエスト「花冠主人公ほのぼの系・見ほれるような笑顔」でした・が
ちゃ、ちゃんとリクに叶っているのかどうか激しく疑問であります・・・!!!
す、すみません流衣サマ!せっかくリクエストしていただいたというのに・・!orz
話の時系列的には3巻後って感じですが・・曖昧です・・・すみません。
流衣サマ、リクエストありがとうございました!!!!*>_<*
06/08/31